皆さん新築一戸建てを検討されている中で、物件情報を読んでいると、「市街化区域」というものと「市街化調整区域」というものがあることに気づくと思います。
一般的な物件なら「市街化区域」に建築されていますが、ときどき「市街化調整区域」というところに建築されている新築一戸建てを見ることがあります。
市街化調整区域の表記に過剰に心配される方もいますね
全く心配しない方がほとんどやけどね
本来は建築不可のはずの調整区域ですが、なぜ建築されているのか、そしてそういったエリアに建築されている新築一戸建ては購入していいのか解説していきたいと思います。
市街化調整区域の建売新築一戸建ては買っていい?
結論から言うと、「気にせず買ってもいい」と思います。
あくまで今回は「市街化調整区域」に「新築一戸建てが建築されている」状態を、市街化区域に新築が建っている状態と比較して、気にせず買っていいという考え方です。
市街化調整区域というのは基本的には建築不可のエリアになるので、不動産の価値としてはかなり低くなるためそういった不動産は購入を回避するのが常識です。
市街化調整区域とは何か?
市街化調整区域とは、市街化区域とほぼ対を成す言葉で、とてもざっくり説明すると
市街化区域 ⇒ 建物を建てていいところ(促進)
市街化調整区域 ⇒ 建物を建てちゃダメなところ(抑制)
という考え方になります。つまりは市街化調整区域とは、建物が建って市街地になっていくのを抑制していこうというエリアになっています。
市街化調整区域はどんなところ?
それでは具体的に市街化調整区域というのはどんなところかというと、よくあるのが住宅街のちょっと近くの田んぼや林が広がっているところというようなイメージです。
ものすごく山の中はそもそも市街化区域にも市街化調整区域にもなっていない非線引き区域というものになっていることが多いのですが、そういった山の中ではなく市街地の近くの田舎というようなイメージです。
ですので、その境目などは建築可能なエリアと建築してはいけないエリアが隣接していたりして、少しだけ不公平な感じがすることもあります。
なんで市街化を抑制したいところがあるの?
それではなぜ市街化調整区域のような建築を抑制するエリアがあるのでしょうか。すべて建築可能にしたほうが街は発展するでしょ?と思っていしまいますが。
理由はいくつかあるようですが、大きく分けて①市街地のコンパクト化と②自然の保護という二つの理由があるようです。
まず一つ目の市街地のコンパクト化というと、市町村などの行政サイドから見ると、住民がいたるところに居住していると、その住民のための道路や上下水道などの整備をする必要があり、効率が良くありません。ですのである程度住民が住むエリアとそうでないエリアを決めて開発していってもらう必要があるという要素です。
そして二つ目は自然の保護で、自然豊かなエリアに建築していってしまうと、田畑の減少で生産力の低下や山林の減少による環境破壊が進む可能性があります。そういいった意味でも建築を抑制するエリアを設ける必要があるわけです。
市街化調整区域に建つ建売のパターン
建物を建築してはいけないという市街化調整区域でも、新築一戸建てを検討していると「市街化調整区域に建つ新築一戸建て」というものを時々見ることがあります。
そういったものはどのように建築されるのでしょうか?違法に勝手に建築されたものなのでしょうか?
開発許可で建築されている
市街化調整区域で新築一戸建てが建築されているパターンとして「開発許可」というもので建築されているケースというものがあります。
これは物件のイメージとしては、田舎の元田んぼやったのかな?ってところに10区画ほどの新築一戸建てが立ち並ぶ現場があるようなイメージです。ちょっとわかりにくいですが下の写真が田んぼの真ん中に現れた開発現場です。
これは簡単に言うと「特別OK」が出ているということで、市町村など方針で市街化調整区域にも関わらず建築していいと許可が下りたという方法です。
市街化調整区域に指定されていても人口を増やしていきたいなどの行政の方針で建築していいという場合は結構あるということです。
既存宅地で建築されている
そしてもう一つの方法が「前からそこに家があったから建てていいという」建築許可で建築されている方法です。
これは物件のイメージで言うと、市街化調整区域の古い住宅街の中に1件だけ新築一戸建てが建っているというようなイメージです。こちらも少しわかりにくいですが、こういった古い住宅街の一軒を壊して新築を建てるというような物件です。
これは市街化調整区域に指定する前から住んでいた人の区画は、もう一度建てていいよって言ったところで市街化を進めているわけではないので、建築許可が下りるというような考え方によるものです。
また住民側からの訴訟リスクも考慮にいれた政策ではないかと考えられます。「明日からここ調整区域で建て替え不可だから・・・」といったら誰でも怒ると思います。そういった観点から市街化調整区域に指定した時に既に建ってたところは建築してもいいという運用になっているのかもしれません。
ちなみに市街化調整区域の決定がされたのは、昭和45年11月23日ということでそれ以前に建物があったかどうかを登記や航空写真から判断します。
市街化調整区域に建つ新築は安いか
このような開発許可や昔から家があったことによる建築許可で市街化調整区域でも建築可能になり、建売新築一戸建てが建築販売されていたりします。
それではこういった市街化調整区域に建つ新築一戸建ては「安い」のでしょうか。答えは「そうでもない」です。
市街化調整区域の物件が安いのは「建築できない」からであって、建築できる市街化調整区域の物件は市街化区域並みの価格で取引されているのが一般的です。区域の名前だけで安くなるということは販売実績から統計を取ってみても特にありません。
もちろん、市街化調整区域というのは基本「田舎」です。公共交通機関や商業施設などの観点から不便というエリアも多くそういった立地面の要素で安い価格帯で販売されるという要素はありますが、「市街化調整区域だから安い」わけではありません。
調整区域の新築を避けるべきという考え方
ここまで市街化調整区域に新築一戸建てが建っていても、市街化区域とほぼ同じなので気にせず買っていいという考え方を紹介していきましたが、最後に気にすべきという考え方もあるので紹介していきます。
次も建築の許可が下りるか不透明?
市街化調整区域は説明したように、基本建築不可のところに許可を下すという仕組みで成り立っています。ですので今回新築一戸建てを建てるときに許可が下りても、次に古くなって建て替える数十年後に同じように許可が下りるかは不透明ということです。
確かに法律は少しずつ変わっていくものなのでそう言った懸念もあります。
しかし行政側の立場で考えると、次に許可を出さないとすると住民側から訴えられたりするリスクもあるのでなかなか現実的ではないのではないかと思います。
「調整区域だけど特別OKでここに家を建てられますよ」と市街化調整区域に誘い込んどいて、その後に「もう一回建築するのはだめですよ」っていう市街化調整区域の基本の対応に戻すというのは、住民からすると「どんな罠やねん」という感じでしょうから、何の補償もなくそんな方針転換するとは考えづらいのではないかと思います。
調整区域なのでインフラ面が不安?
市街化調整区域は市街化を抑制していくエリアなので、道路や上下水道などのインフラを積極的に整備していこうというエリアではありません。
ですので、配管整備や老朽化したインフラの補修なども市街化区域のほうを優先して行われやすいという側面はあります。将来道路や上下水道の整備が満足に行われないというような懸念も確かにあります。
都市ガスなどはプロパンガス・オール電化対応で何とかなくてもなりますが、上下水道の断絶は相当なダメージです。井戸?浄化槽?など生活が一変してしまいます。
ただ開発許可にしろ既存宅地にしろ一定の居住者がいます。将来インフラを維持できない見通しならばそもそも調整区域に建築を許すようなことをしないと考えるべきで、そういったことも含めて検討したうえで建築していいという結論に達していると考えるのが素直な考え方かと思います。
市街化調整区域の建売新築一戸建ては買っていい?:結論
市街化調整区域に建売新築一戸建てが建っていても、気にせず買っていいです。
だいたい①開発許可②既存宅地というもので建築されているケースが多いと思います。
市街化調整区域に建っているとはいえ建築可能な土地なので、それだけで価格が安いということはなく、立地などで価格が決まっています。
新築一戸建てが建築可能でも市街化調整区域は避けるべきという考え方もあるので、きちんと検討して不動産探しの参考にしてみてください。