不動産業界に携わっていると住宅ローン関係のネット情報なんかもよく見ることがあります。その中で住宅ローン支払いの金額は年収の20%以内で収めるべきという、「返済比率20%論」というものがあります
我々も業界歴長くなってきましたが、実際お客さんの支払いは20%に収まりますか?
無理やな。それやと国民のほとんどが新築買えへんようになるな。俺らも廃業やな。
今回は住宅ローンの支払い金額に関する「返済比率20%論」について解説していきたいと思います。
住宅ローン支払いは年収の20%までに収めるべき?実際の建売新築購入者はどれくらい?
新築一戸建てを購入する方の多くは住宅ローンで購入するわけでそうなると、「無理のない返済」ってどれくらいなんだろうっていう疑問・不安が思い浮かびます。
そんな時に検討するのが住宅ローン支払いが収入の何パーセントか考える「返済比率」の問題です。
「返済比率」というテーマ
返済比率とは、「年収に占めるローンの年間返済額の割合」のことです。
例えば年収500万の方が月々5万円(年間60万円)の借入をしている場合は、返済比率は
60万円÷500万円×100=12%
になります。
返済比率20%論は住宅ローン支払いでこの計算をした場合これが20%以内だと安心、超えてくると気を付けてという考え方です。
住居費を収入のどれくらいにするのか
それとほとんど同じ考え方で、住居費を収入のどれくらいにするかというか検討もあります。これは賃貸住宅に住んでいる人の「家賃」が年収のどれくらいまでにすべきかという考え方も含まれた概念です。
賃貸は当然家計が苦しくなると安いところに引っ越すことができるので、住宅ローンの返済比率よりも多少無理をしてもいいように考えられるのが普通で、年収の30%以内という情報発信が多いように感じます。
返済比率は大別して2種類の情報発信
具体的に住宅ローンの支払額は年収の20%論について考えていく中でネット上の情報発信で2種類のパーセンテージがあることに気づきます。
非銀行系は年収の20%に収めるべき
住宅ローン支払いは年収20%論で書かれているのは非銀行系の情報発信媒体が多いです。金融機関を紹介するビジネスをしている媒体や個人ブログなどが20%と書いています。
結構多くの記事で書かれているのは基本的に書く人が多いからともいえます。住宅ローン審査を促してアフィリエイト収入を得ようとするHPなどを含めて書く人の数は、銀行系より非銀行系の方が多くなるのは当然ですので、銀行以外が情報発信しているケースは多いです。
非銀行系の良い所は実際に自分たちがお金を貸すビジネスではないので「正直なところを書ける」というところですが、悪いところとしては「勝手なこと言い過ぎ」「理想論すぎ」という所があります。
銀行系HPは年収の30%とか書いてる
それに対して実際に融資する金融機関のHPなどを見ると、パーセンテージを書いていない情報発信がほとんどですが、書いているところでも「年収の30%」など非銀行系サイトよりも高めに書かれていることが普通です。
これには2つ要因があり
①まず貸したいから高くしているという部分、さらには現実に借りている人の多くが年収の20%に収まらないという現実を考えると、20%以内とは言えないということ
②そもそも審査における返済比率の話をしており、少し高めの審査金利例えば2.475%くらい金利の支払額というものに対する返済比率の話をしている場合があるということ
の2点が挙げられます。
お客さんと不動産屋で話がかみ合わない
この住宅ローンの「審査」における返済比率の話をしがちなのは金融機関とその窓口となりがちな我々不動産営業マンです。
ですのでお客さんが実際の支払額ベースの「どこまでの支払いが安全やと思います?」という質問をしているのに、不動産屋が審査金利ベースの「返済比率30%以内だと審査通ると思うので・・・」みたいな話をして、お客さんと不動産屋で話が嚙み合わず、お客さんが思っていた内容の答えが返ってこない場合があります。
実際の建売のお客さんは20%に収まらない方がほとんど
しかし先ほど銀行系のHPのところで出てきたように、住宅ローンの支払いが年収の20%以内に収まる人が多いかというと、正直かなり少ないです。
年収の額面と手取りの20%計算すると
年収と言っても額面金額と手取りの金額がありますので、そこでどちらを計算するのかも違いますが、手取り金額は額面の8割くらいが一般的です。
そうなると年収が額面800万円手取り金額640万円として、その方が住宅ローンを年収の20%以内で収めるように計算してみると、(固定金利は1.6%・変動金利は0.5%・借入期間35年・元利均等・ボーナス返済なしで計算)
年間返済額(20%) | 月々の返済 | 借入可能額(固定) | 借入可能額(変動) | |
額面800万円 | 160万円 | 13.4万円 | 4310万円 | 5160万円 |
手取640万円 | 128万円 | 10.7万円 | 3440万円 | 4120万円 |
となります。これはまあそんな気もするし、それくらいかなという風にも思う金額ではありますが、年収800万円の人が変動金利で5160万円の借入で収まっているかというと、現実はもっと借入する人が結構いますよねという感覚になります。
建売新築一戸建て購入者はどんな支払い比率?
それでは建売新築一戸建てを購入する方のメインの所得層となるとどうなるのかというと、年収400万円くらいの方が多くなります。というより日本国民の年収の中央値は440万円と言われているので、この辺りの所得層が全体でも多くなります。
年間返済額(20%) | 月々の返済 | 借入可能額(固定) | 借入可能額(変動) | |
額面400万円 | 80万円 | 6.6万円 | 2120万円 | 2540万円 |
手取320万円 | 64万円 | 5.4万円 | 1740万円 | 2080万円 |
年収が400万円の人は変動金利で住宅ローンを借りたとしても2540万円以内収めないといけないということになります。
こうなるとほとんどの新築は諦めてください。地方都市の一部の建売商品以外は買えません。フルローンの場合は猶更です。という状況と言えます。
現実的でない理想的数値は・・・
このような感じで、住宅ローン借り入れはいくらまでにした方が良い?という質問に対する答えとしてよく使われる「年収の20%論」というのは、現実の皆さんの借入している状況から考えると、結構かけ離れている理想的数値になります。
当然サイトによっては25%の場合や30%の場合などの数値も書かれていて、「絶対に20%に収めないと危険だよ!」という類の情報発信は少ないですが、このような理想の数字を戒め的に言うのは良い事だと思いますけど、さすがに現実的じゃ無さ過ぎて参考にする気になる人が少なくなると戒めの意味も少ないと思うので、改善が必要かと感じています。
まとめ:住宅ローン支払いは年収の20%論は良い事いうけど
- 住宅ローンの理想は支払いを年収の20%に収める
- 銀行系と非銀行系の情報発信には前提のズレがある場合がある
- 年収20%論はさすがに「理想」が過ぎる
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